あんなに重い金庫をどうやって運んだの?

omoi_kinko私の夫はパキスタン人。結婚する時は、両親は理解して応援してくれたが、そんなに親しくもない親戚から、わざわざ反対の意思表明の電話がかかってきたりした。その親戚から言われた一番むかついた言葉は「どうせ金だろう」という言葉だった。夫は別に金持ちじゃないし、むしろこっちでお金を稼いで故郷に送金する。そんな生活だ。確かに金庫の鍵を開ける鍵屋さんは商売上手かもしれないが、別にそんなところに惹かれたわけでもなく、彼の人柄に惚れたのだ。私の人生なのだから、私が決めた人と一緒になることを、誰にも邪魔なんてさせない。

そうは言っても、やはり育ってきた文化が違うので、驚くことや、理解できないことも他の夫婦よりは多いと思う。それがお国柄なのか、彼自身の性格なのかわからないが、とにかくなんでも大雑把でおおらかだと思う。引っ越しをしてレンタカーを借りたら、返しに行って3日間帰宅しないことなんてザラだ。車の会社とカレー屋と、あと数軒事業をしているので、それらを回ると3日くらいすぐに経つのだと夫は言うが。

また、会社用の大きな金庫があったのだが、引っ越し業者も友達も呼んでいないのに、いつの間にか予定していた場所にきちんと収まっている。あんなに重い金庫をどうやって運んだの?聞いてみても、聞かれたことが意外だとでもいうように目を丸くして、自分で運んだとしか言わない。そこに何があるのか。つっこんではいけないのか。結婚して10年にもなるのに、彼には踏み入れられない領域のようなものがある。

金庫にしたって、中に何が入っているのか、私は知らない。普段からきちんと自宅に帰宅しない夫なので、お金が足りなくなったら電話をして、生活費を請求する。すると、かなりの額の生活費を決まった口座に納めてくる。亭主元気で留守がいいとは言うが、あの金庫の中にはどれだけのお金が入っているのか、あれをどうやって運んだのか、知りたいような、知ったら怖いような、複雑な気持ちだ。